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10月に入ってすぐにまた汚染水漏れが発覚した福島原発。根本的な解決策がないままなので、同様のニュースはまだ続くことになると思われるが、この問題を世界はどう見ているのか。汚染水問題が世界的にもっとも注目されたのは間違いなく9月7日、安倍晋三首相のアルゼンチンのブエノスアイレスで行われたIOC総会での発言だった。
「私が安全を保証します。状況は完全にコントロールされています」
実は、IOC総会の直前まで数週間にわたり、海外メディアではこれまで例がないほど汚染水問題を取り上げた記事が溢れかえっていた。それを払拭するために十分考えた上での発言だったのだが、安倍の発言を問題視している人がいるのだ。
IOC総会までの海外メディアの汚染水問題の取り上げ方は凄まじかった。例えば自らも原発大国であるフランスのニュース専門チャンネル、フランス24は、8月下旬からほど毎日のように汚染水についての通信社の記事を電子版に掲載。イギリスのインディペンデント紙は「東京電力は汚染水漏れを知っていた」と批判する記事をはじめ、IOC総会直前の9月3日には、福島の漁師が取った魚の放射線量を計る活動を取り上げ「福島の放射能魚」という記事も掲載した。ちなみにこの記事は、このタイミングで取り上げる必然性はないように思われる。カナダの公共放送であるCBCも、8月中頃から立て続けに福島原発の汚染水について「福島の失敗~汚染水漏れを認める」などとタイトルを付け、テレビ、ラジオ、電子版記事で取り上げていた。
さらに2013年9月2日、原子力規制委員会の田中俊一委員長が、汚染水が長期にわたり漏れる可能性があるという発言をしたが、その発言も通信社の記事などで世界中のメディアで報じられた。そうした記事の数は欧米メディアを日常的に見ている人たちの目には、異常だと思えるほどだった。だからこそ、安倍はあれくらい強気の答えを返す必要があったのだろう。
もちろんそうした加熱報道の裏には、五輪開催の有力候補地であった日本・東京が注目を集めていたこともある。世界の読者が興味を持つだろうという商業的な意識が働いた東京在住の外国通信社も、この時期、東京発の原発記事を数多く配信していた。外国にいる欧米記者の間にも、福島原発の問題が解決していないのに、五輪など誘致して大丈夫か、という率直な疑問があったはずだ。観客は安心して五輪観戦に行けるのか、選手は大丈夫なのか。そこに汚染水漏れのニュースが出て、各国がその疑問を強くしたと考えられる。
ただ五輪決定後は、欧米メディアにそんな記事はあまり目立たなくなった。熱が冷めたてしまえばこのようなものだ。そんな中で敏感に反応を示していた人たちがいる。海外の原子力専門家たちだ。
米ウッズホール研究所のケン・ブースラーは「放射能汚染水を止める方法は現実的にない」と英BBCで発言している。
長年、世界の原子力政策に関わってきた大物専門家もこう言う。
「IOCが東京でオリンピックをやると決めた以上、現状をしっかりと伝え、日本は国内と世界の人々の信頼を得られるよう尽力しないといけない。コントロール出来ていると首相が言ったのに、すぐに東電が出来ていないという。国際社会は何を信じればいいのか。しっかりと事実を伝えないと、日本政府は福島の影に覆われて最終的にはオリンピック開催を諦めるという選択に迫られる可能性だって出てくるかもしれない」
さらに続けて言う。
「安倍は世界の前で汚染水の影響は原発周辺に限定されていると断言した。海に流れてどう食物連鎖に入り込むのかも把握されない汚染水を、だれがどうコントロールできるのか。これほどの量が海に流れ出たことは前例がない。安倍の発言はとんでもない誤解を招くものだ。被害を把握できない驚くほどの無能ぶりを露呈しただけか、はたまた、あからさまに世界の認識を操作しようとする試みだったのか」
こうした話は、海外でも引き続き大きく報じられていくことだろう。それが日本の原発事故対応にも緊張感をもたらすことになればよいのだが。
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